こんにちは、たけぞうです。今回は、税理士試験をあきらめるかどうか迷ったときの考え方について解説します。
税理士を目指している人で
- 今年もまた試験に落ちちゃった…毎日通勤中は理論を暗記してたのに
- 難易度が高すぎる…税理士試験はおかしいのでは?
- いつになったら税理士になれるんだろう…今さら諦めるのももったいないし…
このように悩んでいる人は多いはず。
私も税理士を目指していたので、この気持ちは痛すぎるほどよくわかります。
税理士試験は難関資格であり、全科目合格まで平均6~7年かかると言われており、受験期間が非常に長いです。不合格が続いても途中であきらめきれず、自己嫌悪になりながらダラダラ受験する人もいます。
この記事を書いている私は、税理士試験を3年間勉強して、1科目も合格できなかったほどの落ちこぼれです。最後に落ちたときは嗚咽が出るくらい泣きました。ですがその後、USCPA(米国公認会計士)試験に切り替えて合格し、年収も200万円以上アップできました。
この記事では、税理士試験の試験制度と、勉強を続けるかあきらめるかどのように判断すべきかを解説します。税理士試験に挫折し、そこから復活した私の体験談も参考してほしいです。
- そもそも税理士試験の制度がおかしいので、合格できなくてもへこまなくていい
- 報われない分野で自分の限られた命をムダにするな
- 私は税理士試験をあきらめてから2年で年収200万円以上アップできた

米国公認会計士
ポケモンにハマりすぎ単位ぎりぎりで地元の大学を卒業→銀行に入社するもツラすぎて1年で退職→税理士試験に挑むも3年間で1科目も合格できず挫折→働きながら1年10か月でUSCPA取得→BIG4監査法人(金融)
現在は大手財務アドバイザリーファームでM&A財務DD業務をやりながら、USCPAの勉強方法や監査法人への転職について発信してます。
ここがおかしい税理士試験
税理士試験の難易度:合格率
科目別の合格率は以下のとおりであり、約10~20%で推移しています。
出題内容や受験者によって合格基準が変動するため、合格率が高い=難易度が低いということではないようです。
昔、私の友達が法人税法を受験したとき、今年は出題範囲が大幅に変わってほとんど解くことが出来なかった、と嘆いていました。
出題者が変更すると内容も変わるため、年度によって難易度のばらつきが発生しやすい試験と言えます。
主な科目 | 種類 | 2018年度 | 2019年度 | 2020年度 |
簿記論 | 必須 | 14.8% | 17.4% | 22.6% |
財務諸表論 | 必須 | 13.4% | 18.9% | 19.0% |
消費税法 | 選択 | 10.6% | 11.9% | 12.5% |
法人税法 | 選択必須 | 11.6% | 14.7% | 16.1% |
所得税法 | 選択必須 | 12.3% | 12.8% | 12.0% |
相続税法 | 選択 | 11.8% | 11.7% | 10.6% |
税理士試験の難易度:勉強時間
一般に税理士試験に合格するために必要な勉強時間は、3,000時間前後といわれております。
科目別では約450~700時間とされています。
主な科目 | 種類 | 時間(目安) | 出題内容の比率 |
簿記論 | 必須 | 450~500時間 | 理論0%:計算100% |
財務諸表論 | 必須 | 450~500時間 | 理論50%:計算50% |
消費税法 | 選択 | 450~500時間 | 理論50%:計算50% |
法人税法 | 選択必須 | 600時間 | 理論50%:計算50% |
所得税法 | 選択必須 | 600~700時間 | 理論50%:計算50% |
相続税法 | 選択 | 450~500時間 | 理論50%:計算50% |
これだけ見ると、
「1年に1科目ずつ取得を目指せばいいんじゃない?」
「毎日2時間勉強すれば700時間は超えるし、難しいかもしれないけど合格できそう」
と思ってしまいそうになりますが、そんな単純ではありません。
なぜなら、1度でも不合格になると沼にはまる試験制度だからです。
特に、試験は年1回しかなく、合格発表は4か月後であることは、再チャレンジしようとする受験生にとってかなり厳しい制度と言わざるを得ません。
試験は年1回のみ

税理士試験は年に1回しか受験できません。
「失敗したらまた1年後」という状況は、受験者に極度のプレッシャーを与えます。
この制度により、試験中は精神的なハンデを追わなければなりません。
当日たまたま体調が悪かったら?
直前期に身内の不幸が起こったら?
こういった事情を一切考慮しない税理士の試験制度は、受験者にとって非常に不利です。
「当日は多少体調が悪くても、合格点を取れるのが本当の実力である」
と言われればそうなのかもしれません。
ただこの試験は、ボーダーラインを超えれば全員合格できるという絶対評価の試験ではなく、試験内容も毎年変動します。
コンディションが万全で全力で挑んだとしても、合格できるかどうかわからない試験なのです。選択問題やマークシートを一部導入するなら、年1回開催はまだ理解できるのですが・・・。
なお公認会計士試験であれば、短答式試験は年2回、USCPAに至ってはほぼ毎日受験可能です。
他の資格とも比較しても、税理士試験の難易度を考慮すれば、年1回しか受験できないのはかなり厳しいルールだと言えるでしょう。
合格発表は4か月後

税理士試験は、受験から合格発表されるまで4か月かかります。
8月上旬に試験が開催され、そこから採点されて12月に合格通知が届くというスケジュールなのですが、普通に考えて4か月は長すぎです(税理士受験だけしているとこれが当たり前だと思い込んでしまいます)。
結局、すべて記述式試験のため採点者が受験生全員の答案をチェックしなければならないため、運用が非効率すぎる試験制度なのです。
これによって、受験生の年間の学習スケジュールが大きく狂わされます。
例えば、財務諸表論を8月に受験して、次は消費税だ!と新たに勉強を開始したとします。
しかし12月に不合格であることが判明し、1月からまた財務諸表論の勉強に戻らなければならなくなることもあります。
9~12月の4か月の貴重な勉強期間を、国税庁の運用の非効率さのせいでムダしてしまうのです。
自分が合格しているのか不合格なのかわからない状況で次の科目を勉強するのは非常に難しく、はっきり言って税理士試験受験生をなめている、と感じています。
ちなみに公認会計士論文試験は3か月後(短答式は1か月後)、USCPAは約3週間後に結果がわかります。
計算科目を半分以上占める試験なのですから、さっさとマークシートや選択問題を導入すれば効率的に採点ができるのに、それを全くやりません。
今や日商簿記試験ですらネットで受験が可能になったというのに、税理士試験制度は旧体質だと言うしかないです。
いかに運営側が長年、頭を使わずに過年度を踏襲し続けているかがわかります。
取得しても安泰ではない

6~7年かけてなんとか試験に合格し、念願の税理士になれたとしても将来はバラ色ではありません。
理由としては
- 顧客を見つけなければ売上はゼロだから
- AIや会計ソフトに代替されやすい職業だから
です。
当たり前ですが、独立してもお客さんがいなければ稼ぎはゼロです。
ひたすら理論テキストを暗唱していた人が、いきなり営業力を求められるのです。
また税理士の業務は単純計算が多く、AI化が進んだ結果、奪われる職業の一つともいわれています。
電子国家として有名なエストニアは、基本的に税理士がいません。
国家が国民の通帳口座を管理し、併せて税金計算も行っているため、申告する必要もなく徴収漏れもないのです。
申告納税の電子化・簡略化は、遅かれ早かれ日本でも進んでいくでしょう。
独立ではなく転職するにしても、必ずしもうまくいくわけではありません。
転職市場においては、年齢と実務経験が重要視されます。合格まで時間をかけすぎてしまうと、納得した転職先が見つからないこともあり得るでしょう。
特に、勉強もできず、残業代も出ないようなブラックな事務所にいる場合は最悪です。
- 残業が続いても残業代は出ず、手取りで20万円もいかない。
- 夜20時まで残業した後に、スクールに行って受講するも、ヘトヘトで集中できない。課題もできていない。
- 休みもほとんどとれず、8月の試験前に僅かな試験前休暇のみ。
こんな状態では、試験に合格するのは不可能ですし、貯金も貯まりません。
継続研修制度はなし
税理士試験は、試験時のハードルが高い一方、合格してからは継続的専門研修制度(CPE)がありません。
公認会計士やUSCPAでは、合格後もCPEが義務付けられています。
公認会計士としての使命及び職責を全うし、監査業務等の質的向上を図るために、日本公認会計士協会(以下「協会」という。)は、会員に対して研修の履修を義務付けており、この研修のことを継続的専門研修(CPE=Continuing Professional Education 以下「CPE」という。)と言います。
出典:日本公認会計士協会
会員は、研修会への参加・自己学習・著書等執筆・研修会等の講師を行うことにより、CPEの単位を取得することができます。事業年度開始の日現在会員である者は、当該事業年度を含む直前3事業年度で合計120単位以上の研修を履修するとともに、当該事業年度において20単位以上の研修を履修すること等が求められています。
一方、税理士は合格さえしてしまえばこのような義務化された研修制度はなく、自己研鑽は各個人に委ねられています。
ここも税理士試験のおかしなところであり、最初の試験だけ異常に難易度が高く、その後は年会費さえ払っていれば、何もしなくても「税理士」を名乗れてしまうのです。
この制度の弊害として、私が所属していた会計事務所の所長を例に挙げます。
所長は当時すでに75歳ほどであり、40年以上も前に税理士登録をしていました。
人柄もよく私も非常にお世話になりましたが、ある日社内で所長がこんなことをつぶやいたのです。
「私、今の法人税法は難しすぎて全然わからないからねえ・・・。」
この言葉を聞いて衝撃が走ったとともに、やっぱりそうかと思いました。
従業員30人以上の税理士事務所の所長となれば、実務は管理職が全部やってくれますし、義務化された研修制度がないため、専門知識をキャッチアップする機会がないのです。
この発言は絶対にお客さんには言えないものの、現在の税理士試験制度では「最近の制度をキャッチアップできていない高齢の税理士」が増えてしまうのも仕方ないと言えるでしょう。
私としては、試験の運営を簡略化し難易度も下げる代わりに、CPEを導入して知識やスキルを高い水準に維持させることに注力すべきではないか、と考えています。
特に税制は毎年のように改正されるため、税理士こそ日頃の研修を義務化すべきでしょう。
公認会計士やUSCPAと比較
税理士 | 公認会計士 | USCPA | |
受験機会 | 年1回(8月上旬) | ・短答試験:年2回 ・論文試験:年1回 | ・ほぼ毎日可能 ・会場は東京or大阪のみ |
合格発表までの期間 | 約4か月後 | ・短答試験:約1か月後 ・論文試験:約3か月後 | 約3週間後 |
目安勉強時間 | 3,000時間以上 | 3,000時間以上 | 1,000~2,000時間 |
費用 | 50万円~ (1科目約10万円~) | 30~80万円 (修了考査は除く) | 90~110万円 (受験料含む) |
キャリア | ・独立 ・税理士法人や事業会社など転職先多数 | ・独立 ・監査法人や事業会社など転職先多数 | 監査法人や事業会社などに転職 (地方はあまり求人なし) |
上表は、各会計資格をまとめたものになります。
税理士試験は、受験機会も年1回に限られ、合格発表までの期間も最長です。
また目安勉強時間も3,000時間以上も要するため、試験内容および試験制度ともに難易度が最も高い資格と言えるでしょう。
以上より、皆さんに強調してお伝えしたいのは
税理士試験の制度自体がおかしいので、合格できなくても必要以上にへこまなくていい
ということです。
税理士に挑戦し続けるメリット・デメリット
税理士に挑戦し続けるメリット
- 合格すれば独立開業できる
- 合格すれば転職先に困らない
税理士試験は、合格さえしさえすれば最高の資格だと思います。
税務申告をしない企業はないですから、転職先は困ることがありません。サラリーマンがイヤなら独立して自分の好きなように税理士事務所を運営することもできます。
税理士に挑戦し続けるデメリット
- いつ合格できるかわからない
- 独立しても成功できるかはわからない
- 合格まで時間をかけすぎた結果、年齢制限で転職先が限定される
税理士に挑戦し続けるデメリットは、やはりいつ合格できるかわからない点です。
難易度の高さ、制度の不親切さから、全科目合格に5~10年はかかります。合格してから年収の高い企業に転職したいと思っても、気づいたら無資格のまま40代、50代になってしまう可能性があります。
ブラックな事務所にいるなら、貯金も勉強もできず、ただ年を取るだけになってしまいます。
【関連記事】税理士事務所の給料は安い?ブラック事務所から抜け出して年収アップする方法を解説
また全科目合格できたとしても、独立して成功できるかどうかは別です。税理士になれたからと言ってお客様が勝手に来てくれるわけではなく、自分で営業する必要があります。
なんとか稼げるようになったとしても「じゃあゴルフや旅行に行きまくろう!」としても、お客様がいるので気軽にはできません。
自分のことしか考えない税理士のままだと、そういう姿勢を見抜かれて、いずれ離れていきます。
税理士受験を諦めるか迷ったらやるべきこと

税理士をこのまま目指すか諦めるか、決断するのは非常に迷うと思います。
そんな時にやるべきことは以下のとおりです。
自分の理想を具体的に書き出す
まずは自分の理想を具体的に書き出してみましょう。
税理士を目指す人であれば、主に以下が挙げられるのではないかと思われます。
- 好きな時間や場所で自由に働きたい
- 上司から指示されたくない
- 専門スキルを身につけたい
- 資格がほしい(自分に自信がない)
- 顧問料など安定収入が欲しい
- 自分で事業をやりたい
- 年収をアップさせたい
税理士じゃなくても理想にたどり着けないか検討する
あなたの理想は「税理士」ではなくても叶えられないかを本気で考えてみます。
言い換えると、「税理士になれないと幸せになれない」という先入観から解放されるための作業です。
例えば、専門スキルを身につけたいのであれば税理士ではなく、簿記1級でもプログラミングでもOKなはず。
独立したいのであれば、まずは副業としてYoutubeや動画編集、せどり、コンテンツ販売という手もあります。
安定収入が欲しいのであれば、不動産や太陽光発電など動産投資、高配当株式への投資なども選択肢に入ってきます。
自分の貴重な時間とお金を、これからも受かる見込みのない税理士試験につぎ込む必要はないです。
川を渡るために、毎日水泳の練習をする必要はありません。
それよりも他に橋はかかっていないか、ボートはないか、そもそも川を渡る必要はあるか、を本気で考えてみてください。
このように自分と向き合うことで、税理士を諦めるか続けるかの判断ができると思います。
勉強したことを活かせないか検討する
「とはいっても、せっかく今まで勉強してきたのに・・・諦めるのはもったいない」
と思う人もいると思います。
そんな人には、税理士試験で勉強したことを他に活かせないかを検討してみてください。
勉強内容もそうですし、今まで培ってきた自分なりの努力の方法を、別の分野で活かすのです。
例えば、講義を受けて復習する学習サイクルができているのであれば、それをそのままオンライン英会話での勉強に活かすことができます。
勉強内容を活かすのであれば、特にUSCPA(米国公認会計士)に切り替えるのもおすすめです。私自身、取得して監査法人に転職できたので年収をアップさせることができました。
税理士試験の勉強を頑張ってきた人に、USCPAをおすすめする理由は以下のとおりです。
- 不合格が続くと独立も転職も貯金もできなくなるから
- 独立しないなら税理士試験を受験するメリットがないから
- 何歳になっても税理士は目指せるが、大手企業で経験をつめるのは若いうちだけだから
- 税理士受験の知識・経験があればUSCPAは1~2年で合格できるから
- USCPAなら年に何回も受験できるため合格しやすいから
私が税理士試験を諦めてから2年で年収200万アップできた理由
私は税理士試験を諦めてUSCPA(米国公認会計士試験)に切り替えたことで、2年で年収が380万円から610万円までアップしました。
税理士受験時代(会計事務所)⇒年収380万円
— たけぞう/USCPA(米国公認会計士) (@takezo_uscpa) November 26, 2022
USCPA取得後(監査法人)⇒年収610万円
その後FAS異動⇒年収910万円
自分なんかができたんで、再現性は絶対あります。
税理士受験がツラいなら、USCPA(米国公認会計士)へ切り替えを、少しでもいいから検討してほしい。 pic.twitter.com/kzDUzLJp9u
なぜ年収を上げることができたのかというと
- 向いていない税理士試験に見切りをつけることができたから
- 「税理士として独立開業」以外でも目的を達成できると気づいたから
- 今後も需要がありそうな資格(英語×会計)にシフトできたから
要は、今までの固定観念(税理士として独立しなければならない、税理士試験に合格しなければならない)を完全に取っ払って、新しい世の中の変化を受け入れることができたこと。そしてそれに気づいたら、即、方向転換できたことがよかったのだと思います。
USCPA予備校はTACや大原よりもアビタスをおすすめしている理由

- 教材が約20分のユニットで構成されているから、スキマ時間でも学習できる
- 問題数を厳選しているから、問題集を速く何度も周回する学習スタイルに向いている
- 日本語訳やWC対策教材が優秀なので、英語が苦手でも学習がすすみやすい
- 単位取得を自宅PCでできるので、早く受験要件を満たせる
\講座料20%OFFのやり方もわかる/
まとめ:逃げじゃない、方向転換だ
税理士になれなくても、人生は終わりじゃないです。
おそらく皆さんが税理士を目指したのは
- 専門知識を身につけたい
- 独立したい
- 資格がほしい(≒自分に自信がない)
という理想を叶えるためだったのはずです。
なのに、不合格を何回も経験しながら勉強を続けていると「税理士になれない自分は、なんてダメな人間なんだ」という心境になってきます。
資格は理想を叶えるための「手段」だったのに、いつの間にか「目的」にすり替わってしまっているのです。
この記事を読んでいる真面目なみなさんには
「税理士」になれなくても人生は幸せに過ごすことができる
という当たり前の事実に気づいてほしいと思います。
以上!


