税理士として独立を目指して試験勉強に取り組む方や事務所で実務経験を積んでいる方も多いのではないのでしょうか。
税理士は独立しやすいのが大きな魅力ですが、計画なしに独立しても安定した収入を得るのは厳しいです。
税理士としての独立開業は、決して簡単な道のりではありません。
独立開業を成功させるには、事前に知っておくべきことや必要な準備が多々あります。
本記事では、税理士が独立しても厳しいと言われる理由や独立を成功させる方法について解説しています。あわせて税理士以外の選択肢も紹介していますので、税理士試験の受験生の方で今後のキャリアに迷っている方は、ぜひ参考にしてみてください。
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単位ギリで地元の駅弁大学卒業→銀行に入社するもツラすぎて1年で退職(年収300万)→税理士試験に挑むも1科目も合格できず挫折(年収380万)→働きながら1年10か月でUSCPA取得→BIG4監査法人金融部転職(年収600~690万)→TOEIC855点獲得→大手FAS(年収910万)
凡人がUSCPA(米国公認会計士)試験の勉強方法や、USCPAを活かした転職方法について発信してます。
USCPA(米国公認会計士)資格のおかげで凡人の私でも5年で年収380万円から910万円に
税理士の独立開業が厳しい理由5選
税理士が独立開業しても厳しいと言われる理由は主に5つあります。
- 市場が縮小傾向
- 会計ソフトの良質化
- 価格競争
- 他の士業の業務拡大
- 税務業務以外に営業力が必要
独立開業する前に、食べていくのが厳しいと言われる理由を確認しておきましょう。
それでは理由を確認していきましょう。
1.市場が縮小傾向
税理士の市場自体が減少傾向にあるため独立して食べていくのは厳しいのが現状です。
税理士の登録者数は毎年増加していると報告されていますが、クライアントである小規模事業者の数は2年で約20万件も減少しています。(参考:日本税理士連合会、中小企業庁)
つまり税理士は、市場に対して供給過多の状況に陥っているのです。
独立開業するなら市場調査をしっかりと行い、競合に勝てる専門分野を持っておく必要があるでしょう。
自分の専門分野を身につけて競合と差別化することが大切です。
2.会計ソフトの良質化
専門的な知識がなくても使用できる会計ソフトが増えているため、税理士への依頼が減少しています。会計ソフトを使用するほうが、コストが低く使い勝手が良いと感じる方も多いです。
事業者の立場で考えると少しでもコストを減らしたいと考えるはずです。
税理士への報酬の相場は、月約3万円と決算手数料が約20万円です。会計ソフトが月1,000円程度の費用ですむので、税理士に依頼することを考えると年間で約50万円のコストを削減できます。
ただ、法人決算は別表の作成などが複雑であり、ほとんどの企業が税理士に依頼しています。そのため、法人顧客の獲得をどのように行うかが、独立して食べていけるかのポイントとなるでしょう。
3.価格競争
法改正により価格を自由に決められるようになったため、税理士業界でも価格競争がおこっています。価格を安くして大量の依頼を請け負っている税理士事務所に、需要が奪われているのが現状です。
安い価格での依頼を請け負ったとしても、価格競争に巻き込まれジリ貧になっていきます。
税理士として独立開業するならば、競合に負けない付加価値を付けておく必要があります。安さに訴求するのではなく、適正な価格でお客様に満足してもらえる施策を考えましょう。
4.他の士業の業務拡大
公認会計士のような他の士業が税理士業務を行うことがあるため、税理士の資格だけでは他の士業に太刀打ちできない場合があります。
公認会計士や弁護士は、申請するだけで税理士登録を行えます。他の士業が税理士業務もあわせて行うことにより顧客が取られてしまう可能性があるのです。
税理士も他の業務を行えるように、別の資格取得も検討しておかなければなりません。
- 官公署や権利義務関係に関する書類の作成や提出等(行政書士)
- 雇用保険の加入手続きや労災請求の申請等(社会保険労務士)
- 事業計画書の作成や各種補助金の申請等(中小企業診断士)
税理士もダブルライセンスを取得しキャリアアップを考える人が増えています。
顧客となる企業や事業主が、どんな業務を求めているのかを見極め、別の資格取得を考えてみましょう。
5.税務業務以外に営業力が必要
税理士が食べていくためには税務業務以外に営業力が必要です。そもそもクライアントを獲得できる力がないと独立しても稼げません。
どんなに税務知識が豊富だったとしても、クライアントに依頼されなければ意味がありません。
「雇用されている時は活躍できていたけど、独立開業したら顧客が獲得できず稼げない」といった状況に陥ることは多いです。
独立開業したら営業が必須になることを理解し、税理士として自分の強みを活かした営業方法をしっかりと考えておきましょう。
【厳しいけど】税理士が独立開業するメリット
税理士が独立するメリットは主に以下の2つです。
- 働き方の自由度が高い
- 収入が上がる可能性がある
順に詳しく解説します。
1.働き方の自由度が高い
独立すると業務内容や労働時間などの環境を自分で選択できます。自分で思い通りに物事を進めたい方にとってはピッタリの働き方でしょう。
独立すると以下のようなメリットを享受できます。
- 得意分野を活かせられる
- サービス内容を決められる
- 経営方針を決められる
- 勤務時間を決められる
- 働く場所を選択できる
- セミナーや執筆など働き方が広い
- 辞めるタイミングを選択できる
雇用されていると事務所のルールに違和感を感じていても従わなければなりませんが、独立すると事務所の方向性を自分で決められます。
2.収入が上がる可能性がある
税理士事務所に勤務する税理士の平均年収は400万円から700万円と言われます。
ただし、独立すると雇用側の時とは違いクライアントを多く抱えたり、高単価な案件を獲得できたりすることで収入が大きく上がる可能性があります。
独立するなら、少なくとも雇用されていた時の年収は超えたいですよね。
Twitterでは、開業税理士が2,000万前後稼げることが多いとの意見がありました。
しかし、独立した税理士の年収もピンキリです。リスクを許容して独立開業を上手く軌道に乗せられれば、稼げる上限は高くなるでしょう。
なお、税理士事務所に勤務し続けた場合や税理士資格を持たない人の給料事情にて詳しく知りたい方は「税理士事務所の給料は安い?ブラック事務所から抜け出して年収アップする方法を解説」で詳しく解説していますのでぜひ参考にしてみてください。
【後悔しない】税理士の独立開業を成功させるコツ3つ
税理士の独立開業を成功させるコツは主に3つあります。
- つべこべ言わず営業しまくる
- 自己分析で強みと弱みを把握する
- 実務経験をしっかり積む
成功させるコツをひとつずつ確認していきましょう。
1.つべこべ言わず営業しまくる
独立開業を成功させるためには、営業力が重要です。クライアントを獲得できるスキルがなければ経営は成り立ちません。
税理士として独立したならば、知り合いに片っ端から連絡して紹介してもらうぐらいの気概が必要です。最初の売り上げで独立開業が軌道に乗るかどうかが決まってきます。
独立初期は最初の売り上げが非常に大切です。
営業力の大切さについては、Twitterにて下記のような意見がみられました。
交流会やセミナーなど経営者が集まる場にも積極的に参加して、人脈を増やしておきましょう。SNSやホームページなどをWeb集客を適切に活用し、顧客を獲得していく必要があります。
営業でクライアントを獲得するために自らのサービスの強みを適切に説明できるようにしておいてください。
2.自己分析による強みの把握
独立する前に、まずは自分の強みを明確にしましょう。自分が何が得意であり、何を専門として活動していくかを決めアピールする必要があります。
税理士が行える専門業務としては以下のようなものが考えられます。
- 税務調査対策
- 節税対策
- 相続・事業承継対策
- 会社設立支援
- M&Aに関するコンサルティング
独立する前に、専門的な知識や経験を整理して自分の得意分野を把握しておきましょう。競合との差別化が可能であり、顧客を獲得しやすくなります。
顧客の悩みを解消できるような専門分野・強みをアピールしていくことが大切です。
3.実務経験をしっかり積む
独立は魅力的ですが、開業前には税理士事務所でしっかりと実務経験を積みましょう。知識はあっても実際の現場で活用できないと意味がありません。また、事務所勤務の中でも他に準備しておくべき大切なことがあります。
- 経営ノウハウの獲得
- 人脈づくり
- 資金確保
雇用されているときは与えられた業務をこなしていくことに集中できましたが、独立すると経営のことも考えなければなりません。人脈づくりができていると独立してすぐにクライアントを紹介してもらえる可能性があるので、事業を軌道に乗せやすくなります。
税理士事務所で実務経験を積みながら、経営ノウハウの獲得など独立開業の準備をコツコツと進めましょう。
独立を急ぎすぎて、準備を疎かにしないように注意しましょう。
税理士を目指す人が検討すべきキャリア戦略3選
税理士として独立するのが厳しい状況下で考えられるキャリア戦略は主に以下の3つです。
- 働きやすい環境にて長期戦での全科目合格を目指す
- 上場企業の経理など高待遇な職種を目指す
- 税理士以外の資格を検討し高収入を目指す
それぞれのキャリア戦略について詳しく解説します。
1.働きやすい環境にて長期戦での全科目合格を目指す
独立は厳しい状況だとわかっていても、税理士になりたい思いが強い方は、働きやすい会計事務所や税理士法人で勤務を続けつつ全科目合格を目指す戦略がおすすめです。
一般的に全科目合格まで5〜6年ほどかかると言われているので、長期戦を覚悟の上で税理士試験の勉強に挑みましょう。
全科目合格した後は勤務先の事務所に残って資格手当をもらったり、必要な準備を整えた後に独立したりするキャリアが考えられます。
しかし、前提として働きやすい事務所で働いていることが大切です。ブラック事務所のような安い給料で長時間働かされる状況下では勉強に集中できません。
働きやすいホワイト事務所を見つけて長期戦での全科目合格を目指しましょう。「ヒュープロ」ならば労働環境が整ったホワイト事務所の求人を多く取り扱っています。自分の理想とする職場に巡り合うためにもぜひ活用してみてください。
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2.上場企業の経理など高待遇な職種を目指す
税理士試験の受験生や科目合格者が働く場所は税理士業界だけではありません。税理士の知識や経験を活かして企業の経理業務や税務業務を行うことも可能です。
特に簿記論や財務諸表論などの税理士試験の科目合格者ならば重宝されやすいでしょう。
税理士試験の科目合格を若いうちに取得できれば、上場企業への転職も可能です。独立して大きく稼げるといったことはないですが、安定的かつ高収入の報酬が狙えます。
ただ、上場企業で働きたいならば年齢が若いうちから転職活動を行う必要があります。税理士になることにこだわりがない方は、早めに検討しておくべきキャリア戦略です。
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3.税理士以外の資格を検討し高収入を目指す
税理士として独立が厳しいと感じるならば、税理士以外の資格取得に方向転換してみましょう。別の資格を取得することにより、税理士事務所から監査法人やM&Aなどの高年収企業へ転職するキャリアが選択できます。
そもそも税理士試験は合格までの道のりが長く、独立を検討しないならばコスパが悪いです。
さまざまな資格がありますが、高年収企業から評価されやすい資格として私がおすすめするのはUSCPA(米国公認会計士)です。
これまでの知識や実務経験が活きる科目もあり、税理士試験の受験生ならば合格までに必要な勉強時間は1〜1年半ほどです。合格すると高年収企業へ転職できる可能性も広がるためコスパの良い資格と言えるでしょう。
USCPAの難易度や税理士試験との比較について詳しく知りたい方は「USCPAのリアルな難易度を合格者が解説【簿記1級や税理士試験とも徹底比較】」で解説しているのでぜひ参考にしてみてください。
税理士として独立するかを見極めキャリアを考えよう
税理士として独立するなら自分の強みを明確にし、営業力を強化するなどの準備をしっかりと行う必要があります。厳しい現状を把握した上で独立開業するかどうかを検討しましょう。
税理士の独立開業は決して簡単な道のりではありません。
まずは自分のキャリアの方向性を考え、目標に向けた適切な努力を行うようにしてください。
独立が現実的でないと感じた場合には方向転換も必要です。税理士以外のキャリアを歩むといった選択肢も検討してみるとよいでしょう。
税理士になるための勉強や税理士事務所での業務は他の資格・職場でも役立ちます。これまでの知識や経験を活かして取得できるUSCPAに興味のある方は「毎年不合格&安月給の税理士受験生にUSCPA(米国公認会計士)をおすすめする理由を元税理士試験受験生が解説!」で詳しく説明しているので、ぜひチェックしてみてください。
以上!