税理士試験は科目合格制の試験であり働きながらでも受験できるため、税理士を目指す多くの人がチャレンジしています。しかし、試験内容や継続して勉強する難しさを感じて挫折する人が多いのも実情です。
税理士試験に挑戦するなら難しい理由を把握した上で勉強を進めていきましょう。無計画でやみくもに勉強してしまうと時間を無駄にしてしまう可能性があります。
「税理士試験の何が難しいのか」を知ることで試験勉強の方針や対策を考えましょう。
本記事では、税理士試験が難しいと言われる理由の他にも挑戦する際のチェックポイントについても解説しています。税理士試験を目指そうと検討されている方は、ぜひ参考にしてみて下さい。
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単位ギリで地元の駅弁大学卒業→銀行に入社するもツラすぎて1年で退職(年収300万)→税理士試験に挑むも1科目も合格できず挫折(年収380万)→働きながら1年10か月でUSCPA取得→BIG4監査法人金融部転職(年収600~690万)→TOEIC855点獲得→大手FAS(年収910万)
凡人がUSCPA(米国公認会計士)試験の勉強方法や、USCPAを活かした転職方法について発信してます。
USCPA(米国公認会計士)資格のおかげで凡人の私でも5年で年収380万円から910万円に
税理士試験が難しいと言われる理由7選
税理士試験を目指す前に、なぜ難しいと言われれているのか理由を確認しておきましょう。具体的には、主に以下の7つがあります。
- 合格に必要な勉強時間が長い
- 科目ごとの勉強内容が膨大
- 税法の難易度が高い
- 相対評価の試験でありミスできない
- 1年に1回しか受験できない
- 合格発表までの期間が長く学習計画が立てづらい
- 記述式の試験であり独学での合格は難しい
それでは、ひとつずつ見ていきましょう。
1.合格に必要な勉強時間が長い
税理士試験に合格するために必要な勉強時間は3,000時間程度だと言われます。1年で合格を目指すとしたら毎日9時間もの勉強時間が必要です。
現実的に考えて1日も休まず毎日9時間の勉強時間を確保することは難しいでしょう。
全科目合格までにはかなりの時間がかかります。
予備校や通信講座での最短学習時間でも2,000時間は必要とされています。
初学者であったり社会人で働きながら合格を目指したりしている場合には、さらに勉強時間が必要であり長期戦になります。
2.科目ごとの勉強内容が膨大
税理士試験の科目と必要な勉強時間は以下の通りです。
必須 or 選択 | 科目 | 勉強時間 |
---|---|---|
必須科目 | ・簿記論 ・財務諸表論 | 500時間 500時間 |
選択必須科目 | ・所得税法 ・法人税法 | 700時間 600時間 |
選択科目 | ・相続税法 ・消費税法又は酒税法 ・国税徴収法 ・住民税又は事業税 ・固定資産税 | 500時間 300時間/200時間 150時間 200時間/250時間 250時間 |
税理士試験は、会計から2科目、税法から3科目に合格する必要があります。また、選択必須科目の内いずれか1つの選択が必要です。
限られた時間のなかで合格するために各科目のポイントを深く理解する必要があります。1科目ごとの勉強量は最低でも簿記2級などの資格に相当するため、非常に難易度が高いです。
簿記2級以上のレベルの資格を5つ合格することを考えると税理士試験がいかに難易度が高いか分かります。
勉強量以外にも年度によって出題範囲や難易度が変わるのも難しい理由のひとつです。出題者によって大幅に出題傾向が変わる可能性があり難易度が変化してしまいます。
3.税法の難易度が高い
税法は、簿記や財務諸表論と違い膨大で難解な条文を暗記する必要があります。そのため、税法の科目の勉強に苦戦して挫折する人が多い傾向にあります。
条文を理解し暗記することに拒絶反応を示す人は多いです。
条文だけではなく、法関連の施行令や施行規則を覚える必要があり暗記が苦手な方では得点が伸び悩みます。また、法改正が起こった際には知識をアップデートしなくてはならない点も税理士試験が難しいと言われる原因の1つと言えるでしょう。
4.相対評価の試験でありミスできない
簿記や宅建の試験は合格点で合否が決まる絶対的評価の試験です。それに対して、税理士試験は受験者の全体の出来で試験の合格ラインが決まる相対的評価になります。
たとえ80点取れたとしても上位何名の合格ラインに入らなければ不合格になってしまうのです。取るべき問題を確実に解ける正確性や解く必要のない難しい問題を選別するスキルが必要です。
会計や税務の知識だけでなく、効率よく問題を解く能力も必要です。
5.1年に1回しか受験できない
税理士試験は1年に1回の実施のため、受験の際に大きなプレッシャーがかかります。
体調を崩したり家庭の事情ができたりして、受験機会を逃すこともあるでしょう。
簿記やUSCPA(米国公認会計士)の資格は年に数回実施されるため再挑戦しやすいです。しかし、税理士試験は年に1度の受験のため、受験に落ちた際には次年度まで約1年間、受験を待たなければなりません。
6. 合格発表までの期間が長く学習計画が立てづらい
税理士試験に合格するためには勉強の計画を立てる必要があります。しかし、合格発表まで4か月かかるため落ちたときの勉強計画が立てづらいのです。
私も実際に合格発表までの過ごし方がとても難しく感じました。
新しい科目の勉強を始めたとしても、受けた科目が不合格なら再度勉強計画を練り直さなければなりません。合格していればいいですが、落ちた場合は気持ちの切り替えも含めて計画の立て直しを行うのは大変です。
7.記述式の試験であり独学での合格は難しい
合格するためには、税理士試験の試験内容や法改正に対応した教材が必要です。しかし、専門知識に関する教材が官公庁から出版されていません。
勉強内容は非常に範囲が広く独学では限界があります。
税理士試験は記述式のため、単純な暗記だけでは合格は難しいです。通信講座や資格学校を活用して日頃から講師の先生にチェックしてもらい、効率よく勉強しましょう。
難しいと言われている税理士試験を目指すかどうか悩んだ場合は関連記事「【税理士試験はおかしいのか】税理士をあきらめるか迷ったときの考え方を元受験生が解説します」を参考にしてみてください。受験継続を迷ったときの考え方について詳しく説明しています。
税理士試験の科目別合格率と他の資格の難易度を比較
税理士試験の難しさを科目別や他の資格と比較してみましょう。税理士試験の難しさを以下のふたつに分けて説明します。
- 税理士の科目別合格率
- 他の資格との難易度を比較
それでは、ひとつずつ確認していきましょう。
1.税理士の科目別合格率
税理士試験の科目別合格率は以下の通りです。
科目 | 2022年度合格率 |
---|---|
簿記論 | 23.0 |
財務諸表論 | 14.8 |
所得税法 | 14.1 |
法人税法 | 12.3 |
相続税法 | 14.2 |
消費税法 | 11.4 |
酒税法 | 13.2 |
国税徴収法 | 13.8 |
住民税 | 17.2 |
事業税 | 14.1 |
固定資産税 | 18.4 |
合計/平均 | 16.7 |
科目で比較すると簿記論と財務諸表論の合格率が高く、消費税法の合格率が低くなっています。消費税法は制度内容が複雑であり、難しい科目のひとつと考え受験を避ける方も多いでしょう。
しかし、このように受験科目を選ぶ際に合格率だけで選ぶのはおすすめできません。「将来の自分に役立つか」「今までの実務経験が生きるか」などを総合的に考えて自分と相性の良い科目を選びましょう。
勉強のモチベーションを保つためにも、自分に合った科目を選択しましょう。
2.他の資格との難易度を比較
税理士試験と他の資格との難易度は以下の通りです。
資格 | 必要な勉強時間 | 平均合格率 |
---|---|---|
税理士 | 2,000~3,000時間以上 | 18% |
簿記1級 | 600時間 | 12.5% |
公認会計士 | 2,500~3,500時間以上 | 7.7% |
USCPA(米国公認会計士) | 1,500時間 | 34.3% |
税理士試験の2022年度の合格率は19.5%です。合格率や必要な勉強時間を総合的に考えると難易度がかなり高いと言えます。
簿記1級も難易度の高い資格ですが、税理士はその5倍の勉強量が必要になります。
一方、会計の知識が求められるUSCPA(米国公認会計士)では、勉強時間が税理士の半分程度です。難関資格ではありますが、働きながらも目指せる資格であり、より高年収な職種への転職できる可能性が広がります。
USCPA(米国公認会計士)の難易度や具体的な勉強時間について「USCPAのリアルな難易度を合格者が解説【簿記1級や税理士試験とも徹底比較】」で解説していますので、ぜひチェックしてみてください。
税理士試験は難しいけれども科目免除制度がある
税理士試験に合格することは難しいですが、科目免除制度があります。科目免除制度とは、大学院の修士課程を修了すれば一部科目を免除してもらえる制度です。
- 会計分野の修士論文作成で会計科目1科目が免除
- 税法分野の修士論作成で税法科目2科目が免除
税法分野2科目の免除を受けれたとすれば、会計科目の2科目と税法科目1科目で合格できることになります。
税法が2科目免除されるのはかなり魅力的です。
ただ、大学院に通うためには学費を払う必要があります。
大学 | 入学金 | 授業料 |
---|---|---|
国立大学 | 280,000円程度 | 500,000円程度 |
私立大学 | 200,000~300,000円 | 500,000~1,500,000円 |
大学院の修士課程を取るためには2年間通わなければなりません。科目免除になっても残りの科目を合格する必要があり、1年で1科目を目指した場合少なくとも5年の年月はかかります。
膨大な費用と時間を投下する必要があるため大学院に進むかどうかは慎重に検討すべきです。
難しい税理士試験に挑戦する際のチェックポイント3つ
税理士試験に挑戦する際にはいくつかチェックポイントがあります。
具体的には主に以下の3つです。
- 難しいことを承知のうえで挑戦する覚悟はあるか
- 勉強に集中できる環境は整っているか
- 科目ごとのポイントを把握して勉強できているか
それでは、ひとつずつ確認していきましょう。
1.難しいことを承知のうえで挑戦する覚悟はあるか
税理士試験は難易度が高く合格するまで時間がかかることを理解しておきましょう。難しいことを承知のうえで挑戦する覚悟があるかが重要です。
働きながらの勉強する方は勉強時間の確保が難しいです。生活のほとんどを勉強に費やすくらいの覚悟が必要です。
たとえ、会社を辞めて勉強に専念したとしても、教材代などのお金を捻出するのが困難になるでしょう。
税理士試験を目指すならば、今一度目的を明確にしましょう。「税理士として独立開業したい」「社会に貢献したい」などの明確な目標がない人にとって、税理士試験の受験はコスパが悪くおすすめできません。
他にも仕事の幅を広げられる資格は多々あるので検討してみてください。特にUSCPAは税理士試験の受験生におすすめできる資格です。詳しくは関連記事「毎年不合格&安月給の税理士受験生にUSCPA(米国公認会計士)をおすすめする理由を元税理士試験受験生が解説!」で解説しているのでぜひ参考にしてみてください。
2.勉強に集中できる環境は整っているか
働きながら税理士試験を目指しているが、勉強時間の確保が思うようにできていないなら職場環境を変えることを検討してみてください。勉強に集中できない職場だと税理士試験に合格するのは難しく、年月を無駄にしてしまいます。
働きながらだと限られた時間でいかに効率よく勉強できるかが大切です。
残業が多く休日出勤があるようなブラック事務所では何年かかっても合格は難しいでしょう。自身の職場環境では勉強に集中できないと感じる場合には、まずはホワイト事務所への転職を考えるのがおすすめです。
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3.科目ごとのポイントを把握して勉強できているか
税理士試験の科目ごとのポイントは以下の通りです。
科目 | ポイント |
---|---|
簿記論 | ・すべて計算問題で出題される ・6割程度の正解率を目指す ・基礎的な問題を確実に解けるようになるのが重要 |
財務諸表論 | ・簿記論と重複する内容が多いので同時並行で勉強可能 ・理論問題と計算問題が半分ずつ出題される ・理論問題は丸暗記ではなく理解が必要 |
所得税法 | ・試験範囲が広く難解な科目 ・理論は暗記と理解を繰り返して応用力を鍛える ・個人対する税金の内容のため興味をもつと勉強がはかどる |
法人税法 | ・試験範囲が広く難解な科目 ・理論と計算問題を関連付けながら進めるのが重要 |
相続税法 | ・相続税法や租税特別措置法となり勉強範囲がある程度絞れる ・身近な事例をイメージしながら勉強すると理解しやすい |
消費税法 | ・税理士試験で最も難解な科目 ・計算のスピードと理論の理解度が重要 ・条文は丸暗記ではなく理解が必要 |
酒税法 | ・実務ではあまり活用できない科目 ・難易度が低く学習範囲も狭いため時間のない方におすすめの科目 |
国税徴収法 | ・暗記が必要な理論問題が多い科目 ・事例問題に対応できる理解が重要 |
住民税 | ・所得税法と重複する内容が多い科目 ・所得税法と平行して勉強すると理解しやすい |
事業税 | ・試験範囲が比較的狭い科目 ・難易度も比較的に高くない ・暗記と要点をまとめる能力が必要 |
固定資産税 | ・試験範囲が狭く勉強しやすい科目 ・理論問題で得点を稼げるように正確な暗記が必要 |
科目ごとのポイントを押さえないと勉強効率が低下していきます。
税理士試験に短期間で合格するためには、効率的な勉強が欠かせません。上記のポイントをしっかりと把握して学習を進めていきましょう。
また、独学だけで税理士試験に合格するには限界があります。資格学校や通信講座を受けることを検討してみて下さい。スタディングの税理士講座ならスキマ時間を利用して効率よく学習ができます。限られた時間でしか勉強できない方はチェックしてみましょう。
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税理士試験の合格が難しい場合は方向転換もあり
税理士は、科目ごとの勉強量が多いだけではなく問題を正確に早く解く必要があるなど難解な試験です。何年も合格できていないなら、将来について一度立ち止まって考えてみると良いでしょう。
税理士試験が全てではないです。受験を続ける目的を再度確認してみてください。
年収を上げたい場合や自分の市場価値を高めたいのであれば他の選択肢もあるはずです。
税理士試験の受験を継続するか迷っている方は「【税理士試験はおかしいのか】税理士をあきらめるか迷ったときの考え方を元受験生が解説します」で実際の私の考え方を解説していますので、ぜひ参考にしてみてください。
税理士をあきらめたとしても勉強にかけた時間が無駄になるわけではありません。これまでの税理士試験の勉強は他の資格取得にも役立ちます。
USCPA(米国公認会計士)の場合、会計の知識を問われるため税理士試験の勉強を活かせ、最短で1年から1年半の期間で合格を目指せます。
USCPAを取得すると高収入の企業にも転職可能になります。
税理士試験に受験生におすすめ資格であるUSCPAについては、関連記事「毎年不合格&安月給の税理士受験生にUSCPA(米国公認会計士)をおすすめする理由を元税理士試験受験生が解説!」で解説しているので、ぜひチェックしてみてください。
合格が難しいと感じている場合には、一度立ち止まり視野を広げてみることを意識してみてください。税理士試験の他にも選択肢があることを知り、より良いキャリアが歩める道を選択していきましょう。
以上!